話題の一冊、「孤舟」渡辺淳一著 集英社を読みました。
有名広告代理店の役員まで上り詰めたエリートサラリーマンが、
60歳定年を迎え、夫婦関係と親子関係に危機を迎える。
いわゆる団塊の世代が退職し、有り余る時間の
中で家庭での役割や生きがいについて考えていく物語です。
仕事一徹だった主人公の威一郎には
これといった趣味もない。
退職したトタン、お歳暮や年賀状は一気に減り、
ライバルはいたが親友などいないと気づく。
「荷物も持たず、勝手に行動、疲れたら寝る
・・・あなたとの旅行はうんざり」とか、
妻を喜ばせようと頑張って作ったチラシ寿司に4時間もかかり、
「後片付けが大変だからもういい」と言われてしまう。
ありがちな夫婦のやりとりや
女性ならでは身勝手さも描かれて・・笑えます。
自由で楽しいはずの第二の人生は、妻や子に疎まれ、
挙句の果てに家を出て行かれてしまう。
孤独を募らせながらも、犬と自分だけの暮らしの中、
デートクラブで逢った若い女性(小西くん)との交際や
ぎっくり腰を経て、
肩書きなどない本当の自分と向きあい受け入れていく。
特に、最後の小西くんとの会話は、
心が温まり、何度も読み返しました。
日経新聞に渡辺淳一さんの「愛の流刑地」が連載されていた頃、
毎日楽しみで新聞をウラ面から読まされてました。
今回も非常に面白く一気に読みましたが、
最後に威一郎が自信を取り戻し、
新しい生活を獲得していこうとするラストシーンに、
「やるせない終わり方でなくて良かった~」
と正直ホッとしました。