妊娠中に消費生活アドバイザー  

(1) 受験のきっかけ

半年に一度、1科目1週間で CFP の受験をしていた頃。

受験勉強の期間が短いうえに、長男も幼稚園に通うようになったため、やや時間に余裕がでてきていた。

そこで、独立系 FP として自主開催セミナーを開いたり、個人相談の依頼を受けたりする機会も増えてきていた。ほとんど収入にはなっていなかったが、自分の知識が誰かの役に立つことで社会に貢献しているような気がして楽しかった。

そんなある日。

新聞記者の弟が消費生活アドバイザーという資格に挑戦しているという。

どんな資格なのか?と尋ねると、

「消費者関連の法律や知識を生かして、例えば悪質商法への対処法をアドバイスしたり、企業のお客様相談室に勤務したり、消費生活相談員として公的な機関で活躍することもできる・・」

私は、先日の家計見直し相談時の子育て主婦の言葉を思い出していた。

「実は、家計を足しになればと始めたことが、裏目に出て貯金がほとんどなくなってしまったんです・・。」

パソコンと教材を購入し、教材を修了したら毎月仕事を紹介するという話。だいたい月 5 ~ 6 万円の収入になるので、初期投資の購入費40万円はすぐ元がとれると言われたそう。
教材終了後1、2回は仕事の依頼が来たが、仕上がりに技術的なクレームをつけられ、その後仕事の紹介は全く来ない・・・いわゆる内職商法である。

「私がバカでだまされたんですよ。それに私の技術レベルでは無理だったんですね・・・」と奥さんは切なそうに語った。

あのとき、どうアドバイスすればいいか分からず、無力さを感じていた私は、「消費生活アドバイザー」という資格に強い興味をもった。

インターネットで調べてみると、悪質商法に関する法律の知識ももちろんだが、環境問題や衣食住に関することも勉強できそうである。受験申請申込期限にギリギリ間に合う。 CFP の受験日程にも影響がない。

面白そう!・・・また、見つかってしまった。

ところが、受験料が 12,600 円もかかる。受験要項の取り寄せにも別に費用がかかる。

CFP 2 科目分の受験料より、高い・・・。それも受験地はまた東京で、 1 次試験と 2 次試験で合計 2 回も行かなくちゃならない。

どうしよう。

資格取得にこだわらなくても、今後アドバイスにも困らぬよう悪質商法への対処法だけ自分で勉強すればいいんじゃないか?

そんな風にも思えた。

しかし、過去に私にそんなことが出来たことがあっただろうか?

期限もなくお金もかかっていない・・つまり、切羽詰まっていない状況で、いつ役に立つかわからない勉強をきちんと学ぶなんてコト。

皆さんはどうですか? 私には出来ない。出来たことがない。

「いつかやろう、やればプラスだ」とわかっていても、そこに「やらねばない」という必然性がなければ始めることすらできない。仮に始めたとしても、なかなか続かない。ここまでという目標や到達レベルが目に見えないため、学び続けるインセンティブに乏しいのだ。

受験する言い訳を探しながら「えいや!」という気持ちで受験申し込みをした。

その時の私には「受験をやめる」こと、イコール「成長が止まる」ことのように感じていた。
 
(2) かさむコストにあえぐ

しかし、困った事態が発覚した。

消費生活アドバイザーの過去問題集が手に入らないのである。

過去問題集だけでなく、受験対策テキストも近所の本屋さんにはない。家族で出かけたついでに新潟市の紀伊国屋書店に立ち寄ると、受験対策テキスト「消費生活アドバイザー合格完全対策  2002 年版」があったのだが・・・な・な・なんと 5790 円もするのである。

これまでの試験勉強のほとんどの時間、過去問題集を解くことだけにあててきたというのに・・・本当に困った。

しかし、本を買うために新潟に来たわけでなく、あまり時間もない。当時はインターネットで本を購入したこともなく、これを逃すと勉強する手立てが他にないので、またもや「えいや!」とそのテキストを買った。

そして帰りの高速で「あ~・・う~・・」といつまでもその出費の痛さにあえいだ。

ギリギリに申し込んだのと、学習資料集めに手間取ったため、 10 月の初旬の消費生活アドバイザーの試験まですでに 1 ヶ月を切っていた。

しかし、有利な条件として、このころ長男の幼稚園入園のおかげで、昼の 10 時から 2 時くらいまで家で集中して勉強することができるようになっていた。勉強時間が格段に増える・・何とかなるかもしれない。

ところが、しばらくそのテキストに沿って学習を進めていくと不安を覚えた。

もともと消費者問題に詳しいとか、栄養成分や衣類の生地の性質などに興味があり相応の生活基礎知識があればそのテキスト以外必要ないのかもしれない。

私のレベルは、どうもそれ以前の問題のようなのである。

この調子で受験勉強を進めることは、小さく不安定な積み木の土台にまた次の積み木を乗せる作業のように感じた。このままでは、試験日を迎える前に崩れてしまいそうである。

そこで「急がば回れ」、食生活や栄養成分に関する本と消費者契約法に関する本を図書館で借りることにした。書き込みができないことに苦しみながらも、食生活の本は読みながらまとめることで基礎の基礎がわかったように思えた。

一方、地元の図書館から借りた消費者契約法の本がどうにも古いのである。悪質商法とそれに対応する消費者関連法規は、ある意味「イタチごっこ」のような関係にあるため、法改正も多い。図書館のそれらの本は何世代か前のイタチ用だった。

インターネットで消費生活アドバイザー受験記 HP などを見ていると、「ハンドブック消費者」や「くらしの豆知識」といった本の話題がよく出ていた。

それらは政府刊行物であり、一般の書店で売られていないため買うことが出来なかった。簡単に手に入らない事実が、更にどうしても必要なモノのように感じて、内閣府に電話した?・・かして、とにかく「ハンドブック消費者 2002 」 520 円(税別)を送ってもらい購入した。

「ハンドブック消費者 2002 」は、値段からは想像できないくらい中身が濃く、非常に役にたった。これを手に入れていなかったら、話にならなかったのではないかと思うくらい。当然だが、情報が新しく非常にまとまっており、図書館でのストレスは一気に解消された。

一連の勉強をするまでは、主婦として毎日料理をしながらも、食品表示や栄養素まで深く考えたことはなかった。繊維の性質やクリーニングの表示ももちろん、電化製品やこどものおもちゃでさえもついているマークの意味など気にしたことがなかった。そのくらい無頓着で無知な主婦だったのである。

また、それまでそんな消費者行政のあり方や事業者や地域の取り組みなんて考えたことがない。国民生活センターや県の相談センターの存在も初めて知った。

それこそ「クーリング・オフ」だって、もっと前からよく知ってたら私自身も損しないで済んだのに!!・・なんて、過去のだまされ体験を振り返りながら学習を進めていった。


(3) 受験前日・当日

あっという間に、受験日が近づいた。

昼間の時間、集中して勉強することで、 CFP に比べると、夜ファミレスに勉強に行く回数はかなり少なかったと思う。それでも、問題集をこなしていないため自信が持てず、試験日の直前には連日通った。

今回の試験会場は、井の頭線の明治大学。

いつものように朝方着く高速バスを利用しようと思っていたのに、予約がいっぱいで席を取ることができなかった。

消費生活アドバイザーの受験料やテキストなどにはこれまでになくお金がかかっていた。そのうえ、前泊の宿泊費まで出費するのはどうにも我慢できない。

試験会場まではちょっと遠いが、横浜市に住む友人・園田夫妻のところに泊めてもらうようお願いした。

園田夫妻は、2人とも私の短大時代からの友人で、3人で海外旅行に何回も行ったほどの親友である。カップル+1 ということで、旅先でも非常に珍しがられた。
結婚直後のヨーロッパ旅行も一緒だったため、「新婚旅行にも一緒に行った図々しい奴」と未だに2人が私をいたぶるので困っている。(彼らがチケットを手配したのに・・)

とにかく、非常に仲良しで、当時はふたりにまだ子供もいなかったため甘えてしまった。さらに、甘えついでに受験前日に近くファミレスに案内してもらい、勉強しようと試みたが、ここで初めて例の「試験勉強お断り」の張り紙を見て断念。さすがに都会は世知辛い。

受験当日。

園田夫妻の住む藤が丘から明治大学は、想像以上に遠かった。

慣れていない土地なのに時間の見積もりが甘く、試験開始に間に合わないかも?という非常事態になり、明大前から大学まで必死で走った。受験に際してありえない失態である・・・。

どうにか間にあったが、心を落ち着けて試験に集中するまで時間のロスがあった。絶対にしてはならないミス・・この後の教訓になった。

もう一つ、消費生活アドバイザー試験でよく思い出すエピソードがある。

科目ごとの試験の間には休み時間があり、中には仲間同士でおしゃべりしている人たちもいた。

ある数人のグループは会社から資格取得を推奨されているらしく、同僚らしかった。
また、ある数人は同じ受験予備校か受験講座を受けた仲間のようだ。

とにかく、その皆さんの会話の内容がネガティブなのである。

「全然、ダメだった~」とか「来年が本番で今年は練習だ」とか・・中には、自分がいかに勉強できる環境でなかったかとうとうと言い訳を話している人もいた。

本当に出来が悪かったのかも知れないし、謙遜かもしれない。

いずれにしても、私にとっては「勉強仲間はいらないな」と思った瞬間だった。

孤独な勉強を続けてきた私は、資格取得のハウツーなどで「仲間を作ろう!」みたいなコメントを見るたび
「教えあったりして楽しいかも・・・うらやましい。」
「独学で子持ちの場合、どうしたら?・・・無理じゃん。」
などと自分の立場を嘆いていた。

でも、その場で勉強仲間同士の駆け引きや言い訳を目の当たりにして、そういうコトは必要ない自分の立場をありがたく思えた。


(4) 妊娠発覚と論文・面接攻略法

1 次試験の合格通知がきた。そして、もうひとつ嬉しいことが・・・。

赤ちゃんが出来たのである。本当に嬉しかった。
いろいろあったが、二人目の子供を授かり、しあわせを噛み締めていた。

しかし、 1 ヵ月後の 2 次試験は大丈夫なのだろうか?妊娠がわかったのが、 4 週目だったので、 8 週目くらいに 2 次試験の論文と面接のため、上京することになる。まだ、お腹も目立たないだろう。挑戦するしかない!!

さて、これまで筆記試験しか受けたことがなく、面接は結婚後の就職試験以来で、論文に至っては短大のとき以来だ。どういう風に勉強すればいいのかわからない。

面接に関しては、これから整形するわけにもいかないし、話し方や振る舞いを変えることも出来ない。

「ノックをして入る」とか、「座ってください」といわれてから座るとか、基本的なことだけ忘れないようにしよう。あと、面接日まで、手持ちのスーツが着られるように、太らないようにしなくては。

面接自体の答弁は準備出来ないので、しないことにした。

困ったのは、論文だ。

2次試験の論文は

第 1 グループの消費者問題・行政問題・法律知識からの4題からひとつ、第 2 グループの経済一般知識・企業経営一般知識・生活経済・地球環境エネルギー問題からの 4 題からひとつ、合計 2 つの論文を時間内に書かなければならない。

長男の幼稚園のお便りさえ、要点をまとめて書くことが出来ない。起承転結を考えて文章なんか書いたことがない。

「消費生活アドバイザー合格完全対策  2002 年版」の二次試験対策で論文の例が載っていたが、語彙が広く組み立てもしっかりしたあまりに素晴らしい論文で参考にならない。そんな論文を書けるわけがないのである。

インターネットで消費生活アドバイザー受験日記や消費生活アドバイザーへの道のような、過去の合格者による指南HPがいくつかあった。

そこで、 2 次試験対策の論文を添削するようなコーナーもあり、いくつか他人の論文を読むことが出来た。そうしているうちに、なんとなくではあるが、 800 文字で語る論文の「雰囲気」が見えてきた。

「雰囲気」と書いたのは意味がある。

人の論文を読んで、「よくこんな言葉知ってるなあ」とか「うまいコトいうなぁ」と思っても、それを自分のものにはなかなか出来ない。所詮、人の言葉や表現なのだ。

カッコイイのでその言葉を無理に入れようとして不自然な文章になったり、ひどいときは「漢字で書けない・・・」なんてことになる。

実際に、書いてみようとすると、今まで読んだ他人の論文の意見が頭にちらついて、ちっとも筆が進まないのである。

書いては途中でやめ、書いては途中でやめ・・して、ひとつの論文も書き上げられないまま時間だけが過ぎていった。

時間内に結論まで書き終わらないことには、採点の対象にもならないのだろう。

色々考えた末、うまい文章を書こうとするのをやめた。陳腐な表現や、たどたどしい文章の流れでもいい。自分の意見をはっきり伝え、書き終わることを大前提にした。

そして、まず先に各出題項目に関する私の意見を決めた。

どういう問題が出るかわからないが、「この分野でよく出るこの問題に関しては、私はこう思っている」という、結論である。
試験対策ではなく本当にそのことについて言いたい自分の心からの意見である。
このやり方は、ある意味、非常に危険である。
なぜなら「この分野の別の問題」が出たら準備ゼロだからだ。

でも、初めてひとつ論文を書き終えることができたのでとても嬉しかった。
そして、このやり方でいくつか書き進めるうちに、自分の得意な構成がわかってきた。

まず、こういう事実がある。

それは、こういう理由で、こういう効果がある。

しかし、一方でこういう性格も有している。

それらを踏まえて、わたしはこう思う。

文章を書慣れてうまくなれば、いろんな組み立てや表現のバリエーションも出来てくるのかもしれないが、それまでの時間が私にはない。

だから、すべてこの構成である。それも、最初に書きたい自分の意見を決めているので、結論の部分の内容が濃く表現が強い。専門家の論文ではないので、豊かな知識や語彙ではなく、自分の心からの熱い意見で勝負!・・というかそれしか手がない。

後でわかったことだが、前述の「くらしの豆知識」は論文対策にも役に立つので絶対に手に入れたほうがいい。私は残念ながら入手が間に合わなかった。

2次試験、当日

いつものように、真夜中の高速バスで新潟を出て、始発の山手線を待とうかと思ったが、やはりお腹の子のことが気になった。あまり無理をしては、元も子もないので前日に東京入りし、代々木上原の友人の家に泊めてもらうことにした。今度は試験会場も近い。

地元では車での移動がほとんどなので、少しの時間歩くことだけでも都会を感じる。妊娠 8 週目だったので、駅の混み合ったコンコースや地下鉄の階段では、自然とお腹をかばい、のろのろ歩きになる。その 1 歩 1 歩を噛み締めながら、試験会場の有楽町の東京ビックサイトへ向かう。

論文の会場は、 200 人は収容できるであろう広い部屋だった。

もうすでに、かなりの人が座って参考書などを熱心に見ていた。こういうとき、なぜか、まわりの人がものすごく文才のある優秀な人に見えるから不思議である。

また、私の前の席の人が、 30 枚以上はありそうな論文を書いた原稿用紙をバサッ バサッと大きな音をたててめくっていて、強い焦りを感じた。自分は、トータルでも 7 枚くらいしか書いてない・・・。変な汗が出るのを感じつつも、熱意だけが暑苦しい自分の論文の原稿用紙に目を落とす。

緊張感に包まれ、論文の試験開始時間が来た。

第 1 ・第 2 グループ各 4 題の論文の出題テーマにざっと目を通す。

やはり、練習で書いた論文をそのまま書けそうな出題はない。チンプンカンプンな京都議定書に関する出題を見て、「これを選択する人すごいなぁ」と余計なことを考えながら、消費者契約法に関する出題と、企業や行政の役割に対し意見を求める出題を選択することに決めた。

とにかく、想像以上に時間がないのである。

当然手書きなので、途中の言い回しを変えると、かなりの部分が書き直しになる。文字数が足りなくなり、引き延ばそうとしたらクドイ言い回しになったりして、何度も消したり書いたりして、用紙がかなり汚くなってしまった。時間切れへの恐怖から焦りまくり、終わりの時間が近づくと、周りの人に聞こえるのではないかと心配になるほど鼓動が
「どきん、どきん、どきん」と激しく脈打った。

とうとう、終わりの時間が来てしまった。

ものすごい脱力感。と、絶望感。

一応、書き終わったことは終わったが、あんな稚拙な論文で合格するわけない!

1次試験合格者は、次年度に限り、2次試験から受験することができるらしいが、私には絶対、無理。来年の今頃は産まれてくる子供の世話で、とても試験どころではない。この資格には縁が無かったらしい・・・。

午後からの面接を受けずに帰ろうかとも考えたが、高速バスの予約時間までやることもない。

何事も経験だ。と思い直し、面接会場に向かった。

それぞれの面接会場の会議室前の廊下に、番号で区切られた面接待ちの受験者たちが並んでいた。論文で不合格を確信した後の面接だったので、どのような気持ちで面接に挑めば良いか複雑な心境だったが、おかげで肩の力が抜けてあまり緊張はしなかった。

程なく、私の番が来た。ひとりずつ、面接会場に入っていくのだが、部屋には面接官が 4 人ずらっと横に並んでいて交互に質問をした。

私は、論文失敗のくやしさから(面接官は全員、消費生活アドバイザー資格を持っているんでしょうねぇ?)なんて余計なことを考えていた。

受験の動機など一般的な質問をいくつかされた後、「活動するにあたり、ファイナンシャルプランナー資格との関連づけは?」と、私への個人的な内容の質問がいくつかあった。

あの面接の内容では質問に答えられないという状況は考えにくいので、不合格要因として挙げるとすれば、アガりすぎてオドオドしてしまうとか、資格を活用していくという意気込みが感じられないとかだろうか。

いずれにしても、面接というのは合否の基準がわかりずらく、対策が難しいというのが、私の感想だ。

肩を落として帰宅すると、 1 日ぶりに会う長男の笑顔がいつもに増して愛しい。

話を聞くと、普段は風邪も引かない長男が、昨日に限って何度か吐いたとのこと。しかも、夫も義母も、私の試験に影響すると悪いと思い、昨晩の電話でもそのことを告げなかったという。

私はますます申し訳なく、泣きたい気持ちになった。

こんなに、家族に心配をかけ、子供を不安な気持ちにさせ、さらに試験に失敗してくるなんて・・・。

「今回は、だめみたい。本当にごめんなさい。」

心からそう思い、後悔とともに謝った。


(5) 合格と受験の意義

それから、試験のことも忘れかけていたある日。

生命保険の相談で懇意にさせてもらっていた知人が電話をくれた。

「消費生活アドバイザーに合格したんでしょう?おめでとうございます。

新聞に名前が出てましたよ。」というのだ。

私は、とっさに、いつも「同姓同名あり」のハンコが押される病院の診察券を思い出した。

「私じゃないと思いますよ。その試験は受けたけど」と、
暗い調子で答えて電話を切った。

でも、なんだか胸がザワザワとしてきた。

そこで、試験を実施している(財)日本産業協会に電話をかけたが、
「合否に関する問い合わせには一切答えられない。全員に通知が届くのでお待ちください。」と取り合ってくれない。

新聞に名前が出ている人もいるのに、受験者本人が合否を知らないなんておかしいと思いながら、落ち着かない時間をすごしたが、
その日の午後、家に合格通知が届いた

このときは、本当に嬉しくて、
家族や実家にはもちろん、資格のことを教えてくれた弟、
前泊させてくれた友人や合格を知らせてくれた知人らに次々に連絡したものだった。

皆それがどういう資格もわからなくても、沢山の祝いの言葉を私にくれた。

こんなことをいうと怒る人もいるかもしれないが、
はっきり言って消費生活アドバイザー資格の論文のレベルは高くない
実際、私のように、ボキャブラリーが乏しく、論理だった文章が書けない人も通っている。

一次試験の択一は確かに範囲が広く大変だが、ある程度社会経験をつんだ方や家庭の消費の鍵を握る主婦の方は、
「こういうことだったのね!」
という勉強中のブレイクスルーも多いだろう。

私自身、この資格の勉強を通して、実生活にも仕事にも役立ついろいろな発見があった。

普段、何気なく繰り返している売った買ったの消費活動もすべて法律に基づく契約であること
そしてそういったことを「知らない」又は「知ろうとしない」隙だらけの消費者が、
悪質な商法のターゲットになっていること。

主婦としての私が、食事を作るにしても衣類を買うにしても住まいを考えるにしても、
理解し納得して行為を行うほうが社会にとっても地域にとっても家族にとってもいいこと。・・・などなど。

初めて「コンシューマー」という言葉を知り、消費の最小単位としての個人の行動を考えさせられている

受験後、私の場合・・・

経済産業省の公的資格だからなのか、合格後すぐ県の消費生活センターの相談員の就職のお誘いがきた。当然、「これから子供が産まれます」と断るしかなかったが。

しかし、すぐに地元の「消費者協会」の仲間に入れていただき、勉強を続けることができた。またその後、地元の消費生活相談窓口開設に声がかかり、微力ながら相談員として関わることができている。

現在も、消費者教育の一環として悪質商法に関する啓発セミナーをライフワークとして行っている。賢い消費者となるためには、情報や教育が必要だと感じるので、今後も出来る限り続けていきたいと思っている。

大人になってから特に、忙しい毎日の生活の中で日常生活に関する「学び」のチャンスは意外に少ない。主婦や社会人としてのこれまでの経験を生かす方法として、消費生活アドバイザーに挑戦してみるのもいいかもしれない。それが、いろんなことを知るきっかけになる資格ではないかと思う。

私はさらに、偶然だがこのあとの社労士受験の動機にもつながっていく。その件は、この後の回で紹介していくこととする。
 

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