消えた年金問題 会社の責任  

「消えた年金問題」が取沙汰されていますが、一部の悪質なケースを除いて、会社側の手続き上の「単純なミス」によって、記録が消えてしまう、記録が漏れてしまう場合も結構あると聞いています。
我々、経営者が気をつけるべき点があればぜひとも教えてください。

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相談者

“会社側の単純なミスによって年金記録が無くなる”という事例は実際に相当数あるんですか?

関 根

はい。

そもそもの背景を説明しますと、昨年12月に特例法が施行されまして、いわゆる消えた年金記録が事業主のミスによるものであると第三者委員会が判断した場合、社会保険庁で記録回復されることとなりました。これまでで、実際に20件以上が特例法に基づいて給付の認定がなされています。( 2008 年 2 月現在)

相談者 その 20 件の中の代表例とは?
関 根

厚生年金保険料を給与から天引きされていたにも関わらず、事業所が「故意に」その社員を社会保険に加入させていなかったというケースですね。つまりネコババです。

多くは社員が給与明細を保存していたことによって発覚しています認定されれば、時効撤廃で事業所は過去にさかのぼって、保険料納付が義務づけられます。

私も過去に「どうもおかしいので給与明細を見てほしい」という依頼があって、見てみると事業主と折半のはずの社会保険料が全額給与から引かれていたというケースがあって驚いたことがあります。
相談者

でも、中には悪質なものばかりではなく、「単なる手続き上のミス」なども、あると?

関 根

そうですね、そこで今回はこの機会に従業員の将来の年金記録に影響を及ぼしかねない例をいくつか確認してみたいと思います。

(1)加入させるべき人を加入させていますか?

パートタイマーやアルバイトでも正社員なみに働いていれば社会保険の被保険者となります。おおむね正社員の 4 分の 3 以上の労働時間・日数というのが加入条件で呼び方の問題でも、給料が少ないといった問題でもありません。

(2)単純な届出ミスのチェックは万全ですか?

転勤などの事務手続きでは同じ日に資格の喪失と取得の届けとなりますので、加入期間の空白などはないはずです。ところが、うっかり・・例えば、 3/31 喪失・ 4/1 日取得として届け出てしまうと、3月 1 ヶ月分の未納となってしまいます。この例は散見されているようです。

(3)住所変更はOKですか?

会社が社員の住所変更を届けていなかったために、 58 歳時に届く「年金加入記録のお知らせ」が届かない人がいます。

住所変更というものは基本的に本人の申し出によるものですが、転勤ですとか結婚など、事業所がハッキリわかる場合も多いはずです。今後は、 35 歳や 45 歳時のねんきん定期便の送付もありますので、住所の確認は非常に重要です。

(4)自社の年金制度をきちんと理解してもらっていますか?

もう一つの消えた年金問題として、「厚生年金基金」や「企業年金連合会」というものがあります。

これは、通常の年金の上乗せとして会社が採用している制度なのですが、加入していたことを知らない従業員が請求しないために、せっかくの上乗せ部分が給付されていない例がかなりの数あると思われます。年金は請求することで初めて給付となりますので、中途退職者も含め、社員の退職時には請求漏れとならないようにきちんと教えてあげてほしいと思います。
相談者

ありがとうございました。
「消えた年金」の片棒を担がないよう注意していきたいと思います。

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