裁判員制度準備  

相談者 裁判員制度が始まるにあたり、会社としては何か対策が必要なのでしょうか?
関 根

東京商工会議所のアンケート結果によると、中小企業のうち約6割が裁判員制度への対策として「特に何もしていない」と答えています。
(2008年12月現在)
でも、現実的には既に候補者には「通知」が届いているわけですから、
会社としても基礎知識や準備が必要になっていますよね。

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裁判員制度の概要としては・・・
国民の中から選ばれた裁判員が刑事裁判に参加し、他の裁判員や裁判官とともに有罪か無罪か、どのような刑罰にするかを決める制度。

一般国民が刑事裁判に参加することで、裁判を身近なものとし、適正で公正な判断が下せるよう期待されて
翌年の裁判員候補者名簿に名前が載った人には「調査票」とともに選ばれたことを通知されます。
その後、事件ごとにくじで裁判員候補者を選び、呼出状と質問票が送られます。

辞退が認められた場合を除き、裁判所に出頭し選任手続きのための質問などを受け、最終的に6人の裁判員が決まります。
審理と評議に要する日数は、約7割の事件が3日以内で終わると想定されていますが、事件により異なります。
 
相談者 現時点で報告がないということは、うちの従業員は当たってないということですよね。
関 根 おそらく、そうでしょうね。でも、今回はいなくても来年以降、従業員が選ばれるかもしれません。
従業員が候補になったことは毎年12月にはわかりますし、呼び出し状は6週間前までに本人に通知されますので、会社としても対応準備には時間的余裕があります。早めにきちんと報告してもらうように指導しましょう。
相談者

選ばれないことを祈りますね。

関 根

人的にあまり余裕がない中小企業にとって、従業員が裁判員に選ばれた場合、正直「困ったな~」と感じる経営者の方もいると思います。
しかし、裁判員の任務の為に休みを取ることは法律上、公民権行使の保障(労働基準法7条)として認められています。

また、裁判員として仕事を休んだことにより、解雇・昇給・昇進 などで不利益な扱いをすることも法律上、禁じられています。(裁判員法100条)

相談者 わかりました。では、具体的にはどういう点に気をつけて対策をしていけば良いんですか?
関 根

問題となってくるのはやはり「休みの与え方」だと思います。
最高裁判所や関係機関は、会社員の裁判員制度参加に関して企業へ協力と理解を求めています。特に任務により収入が減るという懸念から有給の特別休暇を推奨しています。

「年次有給休暇でいいじゃないか」と思われているかもしれませんが、年次有給休暇が残っていない場合や審議が長引いた場合、取り扱いに困ってしまうことになります。
そこで、やはり従業員が裁判員や候補者となったときのための休暇規程をあらかじめ決めておくことお勧めします。

例えば、実際に裁判員なった場合は特別休暇を有給で与える、候補者として出頭し選ばれなかった場合は、数時間程度の拘束と予想されるので「時間単位」の特別休暇とする、というやり方もあります。

相談者 裁判員になると手当てが支給されるそうですが、この辺も企業としては考慮が必要ですか?
関 根

その通りですね。
裁判員になると1日1万円以内、候補者として出頭した人にも8000円以内の日当が支給されます。

そこで、通常に勤務した場合よりも手当の方が少なくなる場合、「差額を支給する」という方法もあると思います。
いずれにせよ「休暇規定」を前もって定めておく必要がありますね。

相談者

お話を聞いていると、裁判員なった場合、企業は必ず「有給」にしないとダメなんですか?

関 根

そんなことはありません。
経営上、「有給」では厳しい場合などは特別休暇を「無給」にすることも違法ではありません。
これは各企業の判断に任されています。

ちなみにすでに特別休暇制度導入済みの大企業では 9 割が有給としていますが、中小企業では無給が多くなると予想されています。

相談者 あと、会社にとって「この人はどうしても休ませるわけにはいかない」「代わりがいない」という場合、辞退はできないのですか?
関 根

裁判員制度は広く国民に参加してもらうという趣旨から、原則として辞退はできません。しかし、国民の負担が過重とならないよう辞退事由を定めており、裁判所から認められれば辞退が可能となります。

会社に勤めている人の辞退については、「その人でないとダメか」、「代わりはいないか」「休んだ場合の影響の重大さ」により、案ごとに判断することになっています。

調査票の段階で1年の中で「特に参加が難しい月」などは聞かれていますので、例えば経理担当者が決算前に呼ばれたり、総務の担当者が株主総会の時期に呼ばれたりしないように配慮されると思われます。

相談者 義務だから参加強制というわけではないのですね。
しかし、もし自分や身近な人が選ばれたら「どうしよう」と思う反面、「どんなことをやるのか」という興味も感じるかもしれません。
関 根

そうかもしれませんね。

しかし、 裁判員には守秘義務があるという点も忘れてはなりません。
裁判員は法廷で見聞きしたことや任務についての一般的な感想を話してもいいことになっていますが、非公開の協議で誰がどんな意見を言ったか、多数決で何対何だったなどの内容については守秘義務があり、公判終了後も守秘義務は続き、違反には罰則もあります。

会社としては、従業員が裁判員となった事実や任務の日時以外の情報は必要ないと思われますので、興味本位に必要以上の情報を聞き出すことの無いよう注意しましょう。

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